万葉の花 flower story

2019 / 09 / 29  13:44

「(作者不詳)尾花(すすき)」巻十 2100 (10月 尾花)

  人 皆は 萩を秋といふ

  よし吾は 尾花が末を 秋とは言はむ

  作者不詳(巻十 2110)

 

<訳>

人はみんな、萩が秋を代表する花さと言うが、よしやそうでも構わない。

私は尾花(=すすき)の咲いた穂先の美しさをこそ、秋の風情唯一だと言おうと思う。

 

<背景>

萩は万葉集で142首と最多数で詠まれており(次は梅で119首)、

葉を茶に、根を漢方に、樹皮は縄、実は食用と、とても身近な植物であった。

ここでは、人々が萩を鑑賞するのに対して、尾花の美を提案している。

尾花は、稲・粟・稗などの収穫期に重なり、

稲と同じイネ科のすすきは、雄大な大地と秋の豊穣のシンボルでもある。

盛りの芒の穂末の美しさにその豪華さと秋侘びた趣を感じて詠んだ、尾花礼賛の歌。

 

◯萩を秋といふ:秋の特色あるもの、秋の尤物(ゆうぶつ、すぐれたもの)、秋の代表としてもてはやす意味

◯よし吾は:上の文を受けて、それはそれとして、の意味。

◯尾花が末:尾花は穂先の蘇芳色が殊に目を引くからであるという。山上憶良が秋の七草に詠んだ。 

 ( ⇨ 「山上臣憶良 七草花」巻八 1537, 1538 はこちら )

 

鈴木其一の‘芒野図屏風’(19世紀 千葉市美).jpg 

(鈴木其一『芒野図屏風』千葉市立美術館蔵)